最近読んだ本
久しぶりに本に熱中しました。
一応自分が作家という職業であるからには本を読まなきゃいけないのだろうなと思って以前に比べるとがんばって読書をしているのですが、売れ筋の、本屋大賞作品なんかを読んでもなかなかどうして「おもしろいっ!!」と思うような作品に巡り会えませんでした。
というかそもそも自分は本が好きじゃないのではないだろうか? とすら思っていました。自分の本をたまに読むとハマるんですけどね……。自分の本は面白く感じるのだろううか。自分で作った料理が美味しく感じるように。とそんなところだったのですが、本当に、かなーり久しぶりに、続きが気になる!止まらない!止めて!誰か僕を止めて!!寝なきゃいけないのに!仕事しなきゃいけないのに!読ませないでこれ以上!という読書をしました。これはぜひ紹介せねばと。
その本がこちらです。小野不由美さんの「屍鬼」
ジャンルで言うとおそらく、ホラーですね。ミステリー+ホラーかな? ここでご紹介したことをきっかけに買おうという方がいるかもしれませんのであまり詳しくは説明しませんが、ある村である時期から人がバタバタ死んでいって、それはなぜ?いったいこの村でなにが起こっているの? というところから話が展開していきます。
おそらくご存知の方も多いと思います。テレビアニメにもなっていますし、コミック化もされていますので。アニメ化、コミック化がされているという時点で原作がおもしろいというのはわかりますが。
ただ、僕は本の後でアニメも見ましたが、やはり原作には敵わないと思いました。どうしても尺の問題でアニメは話をはしょって早々とストーリーを展開させねばならず、なんか軽くなってしまうんですよね。やはり原作こそが最高最強です。
これ、上でリンクを貼っているのは屍鬼(1)ですので、屍鬼(5)まであるんですよ。その長さがネックといえばネックで、5冊も本を買うとなるとなかなかお金もかかってしまいますが、世の中にごまんとあるおもしろくない単行本が1500円とかで売っていることを考えれば、この話を文庫本で読ませてくれるなんてなんてお得なんだ!と思うくらい話がおもしろいからいいのです。
物語に没頭し始めるとごはんを食べに行く時も持参し、料理を待っている間だけでなく食べている間、さらに行き帰りも歩きながら読むくらいのハマりかたをしていました。杉並区を歩きながらも、僕は物語の中、外場村にトリップしていたのです。長い、しかしおもしろい話が長いなんて、素晴らしいじゃないですか。むしろ5冊という長さだからこそ、この面白さが作れるんだなと。
実は読んでいて途中、イライラすることもありました。登場人物に対してイライラしました。おまえなにやってんだよ!!と。わからないのかよ!!と。あいつらは敵なんだよ!!と。おおっと。これ以上は言えません!
しかし普通の小説を読んでそんなこと思わないですからね。僕の場合はあまり小説というのが肌に合わないのか、人気小説を読んでいても「おもしろくないなあ」としか思わないパターンが多いのです。しかしこの屍鬼は、その世界に入り込んでイライラしてしまうんです。特に後半、村が事実に気付いていくところの高揚感といったらもう……あわわ……。まだこの本を読んでいない人がうらやましい。これからこの本を読めるのだから。
これはほんとにおすすめです。5冊まとめ買いを強くおすすめしますね。1冊だけ買うと、放置してしまうんです。全部買ってもう読むしかない!という状況に追い込むのです。シリアスな5冊なので、ついでにお茶菓子的にさくら剛の本なども購入されまして気を紛らわせることをおすすめいたします。
なお、今回はもう1冊おすすめがあります。これは短めですが、これもまた途中で止められないね。間違いなく。
この本、小説というよりは、小説なんですけどドキュメントなんです。
大正時代に北海道で実際に起きた事件なんですが、実際にこんなことが起こるのかと思うと背筋が薄ら寒くなりますし実際の話なのにこんなによくできてるのかよ!!と怒りたくなるくらい読み始めると没頭してしまいます。これも屍鬼と同じくホラー系ですね。といってもおばけとかが出て来るわけじゃないですが。なにしろホラーといっても実話なので。この本を読むと、北海道の地方に行くのが恐くなります。これは1冊だけですし、薄いのでお手軽に読めるでしょう。
これらの本を読んで思ったのは、おもしろい本は早く読めるということです。
屍鬼なんて分厚い文庫本が5冊で、全部読むのに1年かかるんじゃないか?と思っていたのが途中からあまりに止まらなくなり2日で1冊のペースで読んでしまって逆に「もったいない!!」と感じていました。
一方、これらの本が終わった後に読んだ他の小説……。なんと時間がかかったことか。本当に同じ出版物なのでしょうか? ○○ホラー文庫の○○列車という、屍鬼と似たようなテーマの本を読み始めたら頭痛がするくらいつまらなく、1ヶ月近くだらだら進まないまま読み続けた結果ストレスが頂点に達して捨てました。進まないというか、続きを読みたいと全然思わないんですよ!!本を開きたくないんです。開いたとしても、おもしろくなさすぎて文章が理解できないし、いつの間にか読むのをやめて他のことをしてしまっているという。その次に読んでいる本もこれはまた仕事の関係上読まなけりゃいけない本なんですが、ひたすら時間がかかっています。
おもしろい本、つまらない本というのは、読んでいる時におもしろいかどうかだけでなく、おもしろい本というのは勝手に読んでしまうのですね。上の屍鬼や羆嵐なんていう本は、歩きながらもついつい読んでしまい帰宅してからも仕事をしなきゃいけないのに「このシーンが終わるまで!!」とか自分に言い訳をして続きを読んでしまうんです。反対に、その次に読んだつまらない本、これは「歩きながら読書なんてそんな行儀の悪いことできるか!!」と思ってしまいまず本を開く気が起きないのです。屍鬼と羆嵐は「行儀なんていいから先を読ませろ!!」だったのに。
なお、まだ読んでいないのですが、おそらく同じくらいハマれるおもしろさがあるのだろうな、と確信している本があります。なぜかというと、周りの人たちから絶賛コメントを何度も聞いたからです。本についての話を誰かとするということがまず滅多になく、しかもそんなに本を他人に勧めるという行動を人はしないものですが、なぜかこの本、というかシリーズは複数人から「こんなにハマる本はない」というコメントを聞いていて、僕も買い込んで準備万端です。それが北方謙三の「水滸伝」。
みなさん、読書の秋です。本を買いましょう。