さよならカラムーチョ
春は別れの季節ですね。
私はこの度、30年来の付き合いである友と、関係を絶つ決心をしました。その相手とは、誰あろうカラムーチョです。
カラムーチョといえばスティック型ですね。私の中でカラムーチョといったら、スティックタイプの王道のカラムーチョを指すのです。以前は140g入っていましたが、時代の移り変わりと共に今では112gほどの内容量となっています。
しかし、年齢というのは残酷です。私が歳を重ねるごとに、私とカラムーチョの関係には溝ができ、その溝はいつしか修復不能な亀裂にまで発展してしまっていたようです。
以前、南米から帰国時にみなさんからたくさんのカラムーチョをいただきまして、カラムーチョとポテトチップの海の中で私はそれはそれは気持ちよく泳いでいました。スナック菓子の大海原。おいしそうな地域の名産品などもいただいたようですが、それはメディアファクトリーの編集者に食われました。
毎日の主食が、カラムーチョでした。南米での旅を終え、私はカラムーチョとの親密さも前以上に増したのです。こうして帰国後にたくさんふれあっているからというだけでなく、旅の途中でも私とカラムーチョの仲はただならぬものに発展したのです。なにしろ、子供のころからなにげなく呼んでいた「カラムーチョ」という名前、その由来が出会いから30年近く経ってようやくわかったのですから。
「ムーチョ」というのは「mucho」であり、スペイン語で「たくさん」という意味なのです。中南米の旅の最中にふと、カラムーチョというのは日本語の「辛い」とスペイン語の「ムーチョ=たくさん」の組み合わせだということに気付いた時、その時が旅の中の高揚感のピーク。カラムーチョというのは、たくさん辛いという意味の造語なんだ。日本と南米の合作なんだ。このことを知れたというだけでも南米に来た甲斐があった。
モアイやガラパゴスやマチュピチュを見るよりも、カラムーチョの名前の謎を解けたということが旅の一番の成果でした。
ところが話は飛びまして、3月末の発熱です。
いろいろな要素が重なり高熱を出して寝込んでしまったのですが、その最終的な引き金となったのが、なにあろうカラムーチョだったのです。カラムーチョを食べたことにより、私は熱を出してしまったのです。
なんとなく旅の後カラムーチョの海で泳いでいた頃から違和感は感じていました。悦楽に浸りながらも、なんだかカラムーチョを食べると体がおかしくなるのです。これはすなわち、年齢とともに自分の胃腸が全盛期のパワーを失ってきているということでありましょう。わずか7歳の頃、三方原のお店で初めてカラムーチョと対面してからずっと、スティックタイプのノーマルカラムーチョをひとふくろまるごと食べても全く体には影響がなく、平気へっちゃらな顔して野原を駆け回っていた少年でした、この私は。
でも今は違います。顕著に溝を感じるようになったのはここ半年ほどでしょうか。たまにカラムーチョをひとふくろ食べると、すごい勢いで体調を崩すのです。まずいつものごとくお腹を壊すのですが、お腹を壊すと脱水症状にもなるし体がだるくなり、首や肩の痛みも増します。どうしたのでしょう。昔の私ではないし、昔のカラムーチョでもない。私たちはもう昔の関係ではない。そういう変化を感じるようになってから、カラムーチョは控えるようにしていました。距離を置くようにしたのです。
とはいえこちらが避けているつもりでも、予期せぬところでご対面してしまうと、たとえばスナック菓子のコーナーには近づかないように気をつけていても、特売品コーナーなんかで思わずカラムーチョとばったり出くわしてしまえば、流れるヨダレを止めることはできずに買い物カゴに受け入れカラムーチョなのです。
3月末は、いろいろ重なって微妙に体調を崩していたのです。すでに危なかった。なにかおかしいなあ、これは体調が危ないなあ、とうすうす気付いていた。そうだった。そんな時なのに、健康な時だとしてもお腹を壊してしまうカラムーチョをそんなうすうす気付いていた微妙なタイミングでひとふくろ深夜に平らげてしまったのです。
そうしたら一気に高熱と腹痛といろんなものに一斉にやられて寝込みました。そして、気力で次の日くらいに復活したつもりになって、カキフライを買って来てソースとマヨネーズを山のようにかけてご飯と一緒に食べまくったら、胃が痛くて気持ち悪くてたまらなくなって、もうたまらんって感じで、しばらく果物しか食べられなくなりました。
ことここに至っては、カラムーチョと決別するしか無いという結論に至ったのです。
カラムーチョをひとふくろ食べる度に寝込んでいては、人生がはかどりません。かといって、全部じゃなくて半分だけ食べるとかそういうことはできない人間なんです。そんな中途半端な男じゃないんです。やるならば徹底的にやる。やらないならやらない。やると決めたら、とことんやる。途中でやめない。私はそういう生き方をすると決めているのです。そんな私がカラムーチョを半分だけ食べて残りはまた明日食べましょうなんていう女々しいことができますか。
その代わりにおっとっとを買って食べたりしていましたが、おっとっとはすぐ飽きました。今はイチゴにはまっています。あまおうって高いんですね。あまおうはイチゴファンにとっての贅沢。今日もイチゴを買いに行かないと。
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