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旅に必要なもの

 旅に必要なものというのは、旅先での必需品ではなく今回は「どうやったら旅に出られるか」「キミもこうすれば旅に出られる」という内容で書こうとしている。
 よくメール、メッセージをもらったり、マイミクの人のプロフィールを覗き見たりすると、「夢は世界一周」だったり世界一周までいかなくとも「夢は一人旅」という、いつか自分も一人で海外を放浪してみたいと思っている人が多いみたいだ。その気持ちは正直全くわからない。夢どころか「いつか海外に行けたらいいなあ」と思ったことすら一度もないしましてや一人旅なんて冗談じゃないという人だからオレは。インドア派ですから。モニター派ですから。
 しかしそれは置いておいて、いつか一人で長い旅に出たい、世界一周をしたい、その夢や希望を実現させるために必要なものは何か? いったいなんだと思う?

 この前の南米の旅では、2人の旅行者の「旅に出た理由」が印象に残った。2人とも日本人だ。1人は、オレより年上で、元郵便局員さん。彼は南米だけ1年くらいかけてまわっている人で、今でもブラジルあたりを旅していることだろう。まだ仕事をしていた何年か前、彼は連休を使ってメキシコのある観光地に短期旅行に出かけたのだが、登れると思っていた某遺跡のピラミッドが、その少し前に登頂禁止になってしまっていたという。そこは転落事故が起きてからクライム禁止になってしまったのだが、彼は「こうして登ったり立ち入ったりできなくなる遺跡が、時が経つごとにどんどん増えてくるんだなあ」と思い、それをきっかけに仕事を辞めて旅に出たという。
 もう1人は世界一周コースの若い青年で、彼のきっかけは、チャゲ&飛鳥の解散ということだった。(正確には解散していないみたいだけど)チャゲアスのコンサートにいつか行きたいと思っていたら、いつの間にか解散していてその機会を逃してしまった、行きたかったのに行けなかったという後悔、その気持ちが彼に、仕事を辞めて世界一周に出かける決意をさせたという。
 2人とも元々「いつか世界を旅したい」と思っていた人たちで、その「いつか」を具体化したきっかけは「後悔したくない」という気持ちである。2人とも、全く同じ理由だ。些細なことから、「あ、いつかいつか言っている場合じゃないな。今だな」と強く思えるきっかけを2人は掴めたのだ。

 正直、一人旅という夢は、ハードルが低いものだと思う。このオレなんかがあちこち行けているのだから、今時ほとんどの日本人はやろうと思えばできてしまうものだろう。
 しかし一人旅を決行するにあたって最も高いハードルで、そして同時にただひとつ絶対に必要で、これがなければどうにもならないけどでもこれさえあればなんとかなるというものが、「『行く』という決断」である。
 もうこれだけ。これだけあればいい。
 お金と時間がなくて……、という言葉の意味は、そこに実際にないのは金や時間ではなく決意である。決意がないのを無意識にお金と時間がないということにすり替えてしまっているのだ。「行く!」という決断さえしてしまえば、一定期間後に金と時間はできているものだ。詳細は省くけども。
 例えば「アイドル歌手になりたい」とか「総理大臣になりたい」なんていう目標はそう一筋縄ではいかないと思う。しかし今は仮に「世界一周にいつか行きたいと思っている人」を例に出したけど、旅と同じように「最初のハードルだけ越えればあとは簡単」というものを夢や目標にしている人も案外多いんじゃないかと思う。夢とかそんな大げさなものではなくても、ちょっとした願望とか。目標とか。
 ただ、「越えればあとは簡単」の「あとは簡単」という部分は、そうはいっても気付くのが難しい。最初のハードルが高いから、ハードルを越えていない人にはその後ろが見えていないのだ。「あとは簡単」ということに気付くのは、ハードルを越えてからだったりする。「やると決める」という最初の高い壁を越えてみてそこで、「あれ、壁の先はこんなに低かったのか」と気付くのだ。
 ひとつのことでそういうことに気付いた人は、次から次へ行けると思う。「意外とやればできちゃうんだね」ということにどこかでひとつ気付けたら、その人はきっと壁越え癖、決断癖がつくだろう。何歳の時にそれに気付けるかでだいぶ人生が変わってくると思う。それに気付くのが早ければ早いほど、壁の向こうは低いのだ。50歳で気付いたら、低いものも高く見えてしまうかもしれない。

 決意以外はたいした問題じゃない。お金が必要だとしても、決意をした人はお金を作るのだ。お金が貯まったらやろうと思っている人、まだ決意をしていない人には、お金は貯まらないのである。時間も勉強も同じだと思う。
 ばいばーい! ばいばーい!(グッバイボーイ)

食べ物

 最近、ギザギザな食べ物にはまっている。ギザギザならなんでもいいのだ。カラムーチョをありがたく全部いただき、最後の1袋までおいしいおいしい言いながら感謝しながら食べた。でも、なんと最後の1袋を平らげたその瞬間! 突然もうあと1年はカラムーチョは食べなくてもいいやとカラムーチョ満足な状態になったのだ!

 メキシコで最初に訪れた都市といえばみなさんおなじみ、グアナファトだ。ミイラ博物館が見所ということで行ったのだが、時差ボケと疲れと脅えで体調が悪すぎてきつかった。博物館前で来るのか来ないのかわからないバスを待ちながら、体がきつくなってぐだっと座ってしまい、あと4ヶ月もまだ言葉も通じないこっちのわけのわからん大陸で過ごさなきゃいけないのかと思って途方に暮れていたことをよく覚えている。今はまた辛いけど、あの時を思えばマシだと思える。

 いつも思うのだが、旅先でほぼ唯一、旅に来てよかったと思うのはフルーツないしフルーツジュースを食べて飲む時だ。これだけは本当に唯一旅先で幸せを感じることである。他にはあまり無い。人との出会いとか、物とか景色とか、それは一瞬のことだし。これはグアナファトの屋台で買ったスイカだ。

Suica 

 そう、思えば旅も1ヶ月が過ぎた頃には内臓はさておいて外側はやたら健康だった……。今はまた、全身が肩こりの怨霊のようなものに取り憑かれていて針を刺してもらわないとだるくて発狂しそうだ。ほとんど寝たきりと言ってよい。健康体になれるならまた旅に出たいけど、でも海外には行きたくないので、日本で旅をしたい。国内旅行なんて全く行ったことがないんだ。京都にすら行ったことがない。0円の旅をしたい。最近流行ってるみたいだしね。他人の施しに甘えながら日本を1周する試みが。今後出発予定の人もいるみたいだけど、支援を表明してくれた人のことを「支援者」って呼び捨てにしてるのにはちょっと驚いた。

 ギザギザなものというのは、なぜか美味しいんだ。カラムーチョも、カラムーチョ満足状態でありもう1年は食べる気がしないような満足状態なのだが、最近コンビニで売られているギザギザチップスバージョンのカラムーチョ、あのギザギザになると突然おいしく食べられるようになるのだ。他のチップスもそうだ。普通のポテチもそんなに食べたいとは思わないのに、ピザポテトやらチキンコンソメやらギザギザの形のチップスになると、途端に買って食べて美味しい。手が痛い……

 ギザギザ。ギザギザ。何かの擬音としても使いたい。かわいらしい印象を受けるではないか。ギザギザ。っていうのは。

 意外と、形で好き嫌いが出るというのは昔……、うちにいた初代のムクも、「三角のものは食べない」という謎の好き嫌いがあった。なぜか形が三角のものは食べないのだ。一度口に入れるが、ピチャピチャと試し嚙みをしてからボタンとはき出してしまうのだ。例えば、三角形のこんにゃくなんか食べなかった。どうしてだろう。なにか三角に対してトラウマがあったのだろうか。オバケなんかよくおでこに三角の白いやつをつけてるけど。あれと何か関係があるのだろうか。初代ムクは三角のものが嫌いだったし、オレはギザギザのチップスが好きなのだ。他にもきっとギザギザした食べ物があれば好きだろうけど、チップス以外になかなかギザギザした食べ物が見当たらない。なにかあるだろうかギザギザのものが。特にない。でも洗濯板なんかは見ると美味しそうだ。

 その噂の初代ムク

Shodaimuku

 また、次の写真はこれはやはりグアナファトの食堂で食べたタコス……。でも、言葉が通じないからどんなメニューがあるのかもわからないし、本当に苦労した。言葉が全くわからないから選択の余地が無いのだ。いろいろ聞かれるんだけど。毎食毎食、食事の度にまたどうしていいかわからずに途方に暮れていたんだ。食事ひとつとっても決意と勇気がいったし、旅に出ると1日何回の勇気を振り絞らなければいけないんだというそういう毎日なので、長旅の後はそれなりに顔が変わるというのもわかる。

Tacos

 全然関係ないですが、以前出した本のamazonでの値段、中国初恋が在庫が無いため定価以上に高くなっていますが、ちょっとこれを買うのはもったいないかなあって気がするので、ちょっと高い値段では買わないでもいいんじゃないかって思います。

 バイバーイ! バイバーイ!(グッバイ坊や)

ブログ紹介します

 僕はよく、犬に似ていると言われます。あと、アヒル。犬とアヒルがよく言われます。

 ところで、南米旅行中に会った日本人旅行者で、ブログを持っている人が何人かいるのでこの際リンクしたいと思います。みんなペルーのクスコで会った人たちですね。1月の下旬です。ただ、僕はマチュピチュ行き一人だけ仲間はずれで別行動してたのでどこにもどの写真にも登場していませんけどね……

http://www.worldjourney.jp/

http://ameblo.jp/whityworld/

http://chikyuisshu.blog10.fc2.com/

http://www.sekai1.co.jp/uepon/

 みんな今はまだ海外にいます。うらやましい、とは全く思わない。
 けどみんなとてもいい人たちです。感じがいい。それが一番。珍しくグループ揃って感じがいい人たちでした。
 人の旅行記の中に僕が登場するのは、唯一野ぎくちゃんのところだけですね。カンボジアから何度か登場しています。人に書かれるというのも新鮮なことです。

 クスコでの食事風景 いただいた写真です。

Cuzco_2 

パナマ入国の日5

前回の続き

 そんな話を、その夜Kくんともう1人のヒゲモジャバックパッカーのAKさんと、3人でチキンを食べながらその話を聞いたのだ。
 これらは一人旅で海外を放浪する立場であれば、誰の身に起こってもおかしくないことである。命の危険を感じるほどではなかったというのは幸いであったが、もし彼が入り込んだ山道に川が流れておらず季節が冬で(パナマは1年中暑いけど)道ももっと入り組んでいたら、どうなっていたかわからない。どうなっていたか。腕が痛い~
 なにより、ご家族は気が気ではなかったであろう。警察が捜索に動いたということは当然パナマの日本大使館にも連絡が行くわけで、そこから日本の家族の元にもすぐに知らせが入ったわけだ。大使館の人も現地に来ていて、Kくんは脱出直後にハンバーガーをおごってもらったがいきなり重い物を食べたので吐いた。大使館の人のおごりつまり元を正せば我々の血税で購入されたハンバーガーを吐きやがったのだ。なんて贅沢な野郎だ。
 ご家族の方、行方が不明になってほんの数日後に無事が確認されたわけだが、まだ当分旅を続けるという息子にどんな気分でいるのだろうか。こんなことがあったのだから一度日本に帰った方が、とも思うが、本人にしてみればちょっと時間がかかったけど山に入って道にも迷わずただ帰ってきたという通常の観光の範囲の行動を取っていただけであるので、それならたしかに帰国するような理由はない。

 ちなみにヒゲモジャのAさんはオレより年上のようだがたまに見かける究極の節約バックパッカーであり、とにかく入場料でもバス料金でもなんでもかんでも値切らなければ気が済まないという人、オレが残したチキンの骨や付け合わせまで「もったいない!」と言って食べてしまう奇特な人であった。チキンの骨を食べるんだぞ?? 犬だって鳥の骨は食べられないというのに。※鳥の骨は喉や胃にひっかかってしまうので犬にはあげてはいけません。絶対にダメよ。
 さて、気になったのでインターネットで日本のニュースサイトを検索してみたところ、いくつかのサイトに「邦人旅行者、パナマで一時行方不明」という記事が掲載されていた。Kくんの場合は発見までが早かったため、一時行方不明という表現になっているのだ。
 いやあ、なんか大げさだなあ。
 邦人って! Kくんだよただの? ただの無職の若者Kくんだよ? 邦人って!! なんか偉そうじゃないか!!
 しかし思えばKくんも邦人なら、今やオレだって邦人、ヒゲモジャさんだって邦人なのである。いやいや、邦人じゃねーし!! そんなたいそうな身分じゃないって!! そんな出張中の一流商社マンみたいな呼び方は恐れ多いって!!!
 Kくんはさらっと山に入ってさらっと帰ってきた(毒ヘビは食ったけど)だけなのに、それが「邦人旅行者、行方不明」である。我々3人の中で、大きな疑問が生まれた。それは、「いったいどこからが行方不明なのか」という点である。
 そもそもKくんにしてみれば自分は全く行方不明になったつもりではないのだ。命の危険はおろか、道に迷った自覚すらないのだから。行って帰って来ただけなのだから。なのに、記事では立派に行方不明扱いをされている。
 ということは、行方不明かどうかというのは本人の意志にかかわらず、周りの人間がどう思うかというところが大事なところなのか?? 周りの人間や友人知人がそいつが今どこにいるか把握していなかったら、その時点で行方不明なのではないか? しかし外国で山に観光に行っただけで行方不明となるなら、バックパッカーは基本的に毎日行方不明である。オレだって出かける時に宿の人間に行き先を告げることなんてないのだから、外出中にオレ以外がオレの居場所を知っているという状態には常にならないのだ。ということは、オレは日本からすれば毎日宿を出た瞬間から邦人行方不明者になっているのである。
 旅先のアバンチュールに身を委ね帰りが遅くなってしまうこともあるし、過去にはKくんと同じように出先で宿泊してしまい宿には次の日まで帰れなかったなんてこともあった。超邦人行方不明者ではないか。

 それはそうと、Kくんとはその後の行き先がだいたい同じであり、いずれ南米でまた会うだろうと思っていたが全然会わなかったため写真の掲載許可などを取っていない。だから前回の写真やKくんという名称は本人を特定できない段階で留めておいているのであーる。
 この一連の顛末を書いてしまうとごく近くの知っている人ならばあああいつのことかと本人が特定できてしまうが、その夜(3人でメシ食った夜)スーパーで買ったチキンやパンやハムは全てオレが金を出したものであり、Kくんは自分の分を「後で払いますね」と言ったきりすっかり忘れていたのかわざとなのか見事に踏み倒したためその代わりといってはなんだがブログでこれくらい書くことはさせてもらってもいいだろうと思っているのだ。おいしいチキンをごちそうしたのだから。次の日「この人昨日の夕食代のこと覚えてるのかなあ」と思ってもオレはわざと催促はしなかったのだ。彼の無事の帰還祝いということで最初から驕りのつもりだったから。でも「僕の分払いますね」「いいよいいよ、ここはオレに奢らせてよ」というやり取りはしたかった……。これじゃあ全然奢った気がしないだろうが。奢った気にさせないなら、割り勘にしろよ。
 パナマシティは町の構造がわかり辛く、非常に旅行者に優しくない町だと思った。毎日道に迷ったぞオレは。特に夜これだと思ったバスに乗ったら全く見知らぬ地域に行ってしまってとりあえず降りて今自分がどこにいるのかもわからないという状況はもう思い出すだけでも身震いするような心細さだった。しかしパナマはまだ中米の終わり、これから本番である南米の旅が始まるのであった……

 終わり





パナマシティでへんなバスに乗り迷子になり超不安な夕暮れ時に撮った

Panama

パナマ入国の日4

奇跡の生還を遂げた行方不明者・Kくん

Ka_2

前回の続き

 1日目の昼に全ての食料を消費してしまっていた彼は、「人は何も食べずに動き続けようとするとどうなるか」ということを思い知ることになるのであった……

 まず第一の症状は、「身体が言うことを聞かなくなる」ということであった。とにかく早く帰ろうという意識はあるのだが、少し歩くと足が動かなくなってすぐに座ってしまう。休んだ後に歩き出してもまたすぐに座ってしまう。自分の意志とは無関係に体が勝手に座ってしまう。そうして心は前進しようとも体は動かず休み休み、非常に能率の悪い前進となったのである。
 そして第二の症状は、「身体が冷たくなる」ということだ。このボケテ近郊は野宿をしても平気なくらい温かい気候で、しかもずっと体を動かしているのにも関わらず彼は寒くてずっと鳥肌が立っていたという。

 しかしなんとも体が動かなくなってきた頃、突然Kくんを救う救世主が現れた。
 それが、パナマ国籍、山の中在住の気持ち悪いスネークくんである!!!
 オレは、こんな気持ち悪い話聞きとうなかった。
 なんでも、Kくんが草をかき分けて進んでいると水たまりに蛇がいて、そしてKくんの姿を見て一目散に逃げ出したらしい。彼も一瞬「うわヘビだ!」とひるんだのだが、その次に頭に浮かんだのはなんと「貴重な食料を逃がしてたまるか!!」という思いであったというのだ。アホかおまえはっ!!!
 そして彼は近くの石を拾い、それを使って地元在住のスネークくんを楽にしてあげ、そして木の枝に吊して持っていたナイフで皮をはいだのだ。「なんか切れ目を入れるだけで皮は下まで一気に取れちゃうんですよ。簡単でした」というKくん談である。
 その時に彼が撮影した、ヘビと2ショットの写真を見せてもらったのだが、ひと目見て「イヤーーーーッ(泣)!!」とオレは叫んだ。気持悪すぎるんだっっっ!!! これを触るどころか食えるやつがこの地上にいることがオレは信じられないっ!!! いやんバカっ!!!

こんなの
http://cache.amanaimages.com/cen3tzG4fTr7Gtw1PoeRer/26086001146.jpg

 どう見ても毒があるじゃねえかよ。
 Kくんもこれは毒蛇だと直感で思ったらしいが、「毒蛇は噛まれたらやばいだけで肉を食べるのは大丈夫だ」という発想に基づいてこのヘビの皮をはいで生で食べたらしいのだ。
 生で食べたらしいのだ。
 たしか「『グラップラー刃牙』で、毒蛇には噛まれると死んじゃうけど肉を食べる分には安全だと読んだことがあるんですよねー」と彼は言っていた。とんでもないところでマンガの知識が役に立ったもんだ。
 生で食べた結果、「最初はなんか気持悪いと思ったんですけど、食べてみたら刺身みたいで美味かったですよ」というKくん談であった。
 聞きとうない。

 そうして山中の毒蛇を喰らいヘビを自らの血肉としやや立ち直った彼は、ひたすら歩き倒してなんとか3日目の夜に山から出ることができた。
 さて、山の入り口から町まで、既に交通機関がなくなっている時間であったためにヒッチハイクでもしようと考えていると、たまたま彼の前にパトカーが通りかかった。町まで連れて行ってくれとお願いするとあっさり乗せてもらえたのだが、それもそのはず、そのパトカーはその時、日本人行方不明者を探して山の周辺をパトロールしていたところだったのである。
 しかし、車内で警官が「おまえはもしかして山の中で行方不明になっていた日本人か??」と尋ねると、Kくんは「いや、それはオレのことじゃないよ」と答えたのだ。なぜかというと、彼は自分では全然行方不明になったつもりはなかったのである。
 彼にとっては、自分は道は間違えたけどただ時間をかけて真っ直ぐ進んで真っ直ぐ戻って来ただけで、全く行方不明になんてなっていないという考えだったのだ。腹減って動けなくなりはしたけど、彼自身は「迷った」という認識は無く命の危険も全然感じておらず、まさか自分が行方不明者として捜索されているとは本気で夢にも思っていなかったのである。
 警官も警官で、自信満々でそう言われたもんだから「ああそうか違うのか」と納得してしまい、そのまま彼を町まで親切に送り届けてあげたのだ。KくんもKくんで、「おなかすいたから宿に帰る前になんか買って行こう」と地元のスーパーに普通に買い物に行った始末である。

 ところがKくんが買い物をしていると、また1人の警察官が彼を見つけて話しかけてきた。その警官はKくんにちゃんと名前を尋ねた。そして返ってきた答えを聞いてびっくり!! こいつはまさに自分たちが前日から捜索している行方不明者ではないか!! 行方不明者が行方が不明でなく、普通にスーパーで買い物をしている!! 小腹が減ったので夜食を買おうとしている!! これはどういうことだ!! ということで、警官はあわてふためいて無線で応援を要請、ドヤドヤとやって来た警官の一団にスーパーの食品売り場でKくんは囲まれ、そこでようやく自分が捜索の対象になっていると言うことに気付いたのであった。
 これがパナマ入国時にオレが遭遇した日本人旅行者行方不明騒動の顛末だったのである。 終わりのようで感想に続く

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