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世代交代の時期

Eastermoai 

 旅の最終地、イースター島で宿泊したのはこれまた日本人宿の「Hare Kapone」というところ。ここはイースター島初の日本人宿として、ほんの数ヶ月前にオープンしたばかりなのだ。
 オープン直後というせいで、当然のことながら何もかもが新しい。元々宿泊施設ではなく普通の家として作られているためにリビングやキッチンという共同スペースが広く、しかもぴっかぴかなのだ。コンロや水廻りにはまるで鏡のように景色が写り込む。おお美しい。派遣社員時代は出勤したらまず除菌ティッシュでキーボードとマウスを拭いてからでないと恐ろしくてパソコンを触ることも出来なかった、潔癖症でとても海外のホテルになんて泊まれない私でもこれなら安心。

 さて、そんなある日オレが宿のキッチンで食器を洗っていると、視界の隅になんだか人の気配を感じた。
 うん? そうかそうか、きっと新しい宿泊者がやって来たんだな? もしくは、既にここに泊まっているルームメイトが観光から帰って来たのかもしれないな。誰だろう。こんな音も無く近づくなんて、ただ者ではないな。この静けさは、もしかしてしずかちゃんか??
 と思いながら、その気配の方に目をやると…………、
 それはたしかに日本人だったのだが、なんと驚くなかれ。そこには、妻夫木聡に瓜二つの想像を絶する若い超イケメン旅行者が立っているではないか!!!
 ウソっっ!!! こんなカッコいい旅行者がいるわけがない!!!! 絶対にあり得ない!!!! だってこんなにも二枚目だったら近所の農道を歩いているだけでも即効でモデル事務所にスカウトされて、様々なトレーニングプログラムを経た後に多忙な芸能活動が始まるから、だからとてもバックパッカーなんてやっている暇は無いはずだ!!! 仮にまだスカウトされていなかったとしても芸能人と間違えられて成田空港では前田忠明さんやTBSの宇津木デスクなどの芸能レポーター、取材陣に囲まれるだろうから、日本を出国することすら困難なはずだ!!!! 誰だよこれ!!! なんでこんな妻夫木聡風のイケメンの男がイースター島初にして唯一の日本人宿、管理人の川口さんは何年もこの島でガイドを務めており初心者の質問にも気さくに日本語で答えてくれとてもありがたい宿、そんな日本人宿「Hare Kapone」にいるんだ!!! 芸能活動はどうしたんだよ!!! 無期限休養中なのかよ!!!

 というふうにオレは飛び上がって驚いたのだが、ふと冷静になってその旅行者をよく見てみると……。

 違う。
 これは新しい宿泊者でも、既存のルームメイトでもない。
 これは…………、なんとまあ、鏡のようなぴっかぴかのシンクに反射し映り込んでいる、オレ自身の姿ではないか!!!! お~~なんてこったい!!! まさか自分の姿を見てこんなにびっくりしてしまうなんて!! 僕としたことが!! もう恥ずかしいなあ(笑)!!

 いやあ。

 さてさて。




 なめんなよこのヤローッッ!!!!!!






 というように、まあここは元々快適設計な上に新しくもあり、設備面では文句無い日本人宿だといえよう。

 ただ唯一の難点を言えば、宿の敷地内にいるペットのペロが若くて元気すぎることである。




ペロ(犬)

Easterinu 



 元気なことはいいことだ、だって男の子だもん、と安易に思うなかれ。
 たしかにどんなに頑張っても人間の友達が出来ないオレにとって、暇な時間に人ではなくペロとたわむれて寂しさを忘れられるというのは喜ばしいことだが、だがこのイースターペロは、なんとも人間への飛びつき方、その勢いが半端ではないのだ。
 飛びつくというより、こちらが射程範囲に入ったら彼はすぐさま尻尾を振りながらしかし体全体を肉弾と化して全力で飛び掛ってくるのである。それはもう気が狂ったように。まるで30年間待ちわびていた運命の人を見つけたかのように。

 こう見えてこいつは立ち上がると身長150cm以上にも及び、その巨体が容赦なく挑んで来るという状況は決してかわいいで済まされるものではない。オレがおーよしよしよしゅよしゅ!いいごだね~♪とムツゴロウさん化してにこやかに近づくと、すっんげー勢いで弾丸のように飛んで来て、ペロの頭部、藤原喜明級の硬度を持つ頭蓋骨がオレのあごにガゴ~~ン!!とヒット、そのままノックアウトという事件が2日連続で発生した。ハフハフとふりかざす前足もこちらの頭の位置で迫ってくるため、ジャブ程度に食らった回数は数知れず。タイでは本場のムエタイを、中国では本場の少林寺を、チリでは古来より伝わる伝統の忍術を学んだ格闘家のオレですら奴を組み伏せるまでに多くの手傷を負ったほどだ。

 話は元に戻って、少し前に書いたように宿の居心地というのは設備面に加えて他の宿泊者のモラルや社交性に大きく左右されるものである。だからたとえ設備が文句のつけようの無いほど良いものであっても、それだけでイコール過ごし易い宿だとは言い切ることが出来ないのだが、多くの日本人宿と違いここは長期滞在者、いわゆる沈没組が沸きにくい環境であるのだ。
 なぜならば、イースター島は全体的に物価が他の南米地域はもとより日本よりも高い。もちろん宿代も島全体で他の中南米諸地域に比べ高めに設定されているため、この島に1ヶ月も2ヶ月も滞在していられるようなバックパッカーはほとんどいないのだ。そもそもそんな金持ちの旅行者がいたら、「金持ちケンカせず」という格言があるように長期滞在者といえどもそれなりに心の余裕がありマナーを理解している人だろうし、そんなお金持ち旅行者は基本的にパッカー宿ではなく高級ホテルに泊まる。
 それ以前に、そもそもイースター島に片道航空券でやって来る旅行者はほとんどおらず、99%の人間はサンチアゴからの往復チケットであり帰りの便が決まっているので、よって宿の居心地がどんなに良かろうともこの島でだらだらと滞在期間を延ばすということが不可能なのである。
 ということでここは日本人宿といえども宿泊客は短期滞在者ばかりとなり、よっぽどの変質者でも来ない限りは健全に旅人同士楽しく過ごすことが出来るのである。

 ところが!!!!!

 1回で書こうとしたのだがなぜかペロと妻夫木聡の話で時間がかかってしまったので本題は次回「世代交代の時期パート2 ~人間になったペロ~」に続くこととなる!

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