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おしょうゆを求めて

 ※前回までのあらすじ

 チリのイキケの市場にて2日連続チリ辛ソースでウニを堪能するひものちゃんことさくら剛は、夕日を眺めながら「ここにお醤油があったらなあ」と遠い目でつぶやく。そんな他愛も無いひとことにより、ここにお醤油を求めるイキケを股にかけた壮大な旅が始まったのであった。
 
 
 2日連続のウニがつがつ三昧を終えたオレは、なにげなく近所のスーパーマーケットに寄ってみることにした。なにしろカッパが頭の皿が乾くと死んでしまうように、オレはなにげなくスーパーマーケットに立ち寄りたくなったのだ。
 なにしろ今は旅の空である。日本語も前後のつながりなど気にせず自由に使うのである。きれいな文章がなんだ。若いということはなにものにも囚われる必要が無いなあ。だって日本語というのは日々変わっていく言葉で自由でいいよね。

 スーパーマーケット(スペイン語ではスペルメルカド)では数多くの出会いそして別れ、新しい命の誕生などがあったのだがそれは中略として、

 おや?? あれはなんだ??

 

 

Shoyu1 

 

 「KIKKOMAN」の、「Salsa de Soya」というものがあるぞ。
 KIKKOMANといえば、そのまま読めばキッコーマンである。並べ替えるとマンコッキーである。しかし並べ替えても意味が無いのでそういうことはしない。そういう不毛なことは大嫌いだ。オレ自身は決して不毛ではなく毛が生えているけれど。

 このような黒い液体、それがまたこのような小さめのガラスの瓶に入っていてメーカーがキッコーマンときたら、おそらく素人は、あなたがたは「これはキッコーマンの醤油なのではないか」と勘違いしてしまうものだと思う。
 しかし、検証もせずに安易に中身を判断する前に、よく考えて欲しい。ヘイユー、Think twice.
 この商品の名前は「お醤油」ではない。「Salsa de Soya」である。つまり外来語だ。ではこれは英語表記なのか? 果たして醤油のことを英語で「Salsa de Soya」というのだろうか??? ……そのように考えてみると、この世界はたった300人の選ばれた人間のグループによって全てが動かされているという説(三百人委員会)があるが、そのグループの一員である優秀で賢明なあなたならきっと英語で醤油は何というかご存知なことであろう。そう、それは「ソイソース」である。つまり、ソイソース「soy sauce」が醤油であるならば、「Salsa de Soya」というのはソイソースではないのだから醤油のことではないのである。
 
 でも否、ここは南米なのだから醤油の表記も英語ではなくスペイン語になるのではないか? それならば英語でのソイソースにあたる表現がスペイン語では「Salsa de Soya」なのではないか?? という意見もチラホラとみなさまがたの中から出て来るであろうが、それもまた相手の思う壺だと言わざるを得ない。
 たしかにソイソースと「Salsa de Soya」は似ている。似ているのだが、だからこそ「これはきっとスペイン語で醤油という意味なんだろうな。じゃあ買っていこうっと」と暗愚な客に思わせるために仕組まれた罠だということに、そのために敢えて微妙に似ている言葉をつけているということに気付いて欲しい。敵の策略に乗ってはいけない!!! ダメなんだ簡単に相手を信用しては!! ここは南米なんだぞ!!

 たしかに、ご存知の通り「Salsa=サルサ」というのはスペイン語で「ソース」の意味、「Soya=ソヤ」は一世風靡セピアの歌前略、道の上よりでの「ソヤ!ソヤ!」というかけ声のことである。また、ソヤは「前略、道の上より」でのかけ声と同時に「大豆」という意味でも使われる言葉である。「de」は「~の」なので、そうすると「Salsa de Soya」とは英語に直すとそのままソイソース、つまり醤油、しかもメーカーがキッコーマンなのだからそれこそこれは一級品の醤油ということになるのだが、いいや騙されてはいけない。いいか、オレは騙されんぞ!! この南米のスーパーめがっ!! 1億日本人の目を誤魔化せようとも、オレの目だけは欺くことは出来んぞ!!!!! そのような手に乗ってたまるか!!! みすみすこんなものを買わされてたまるか!!!!! オレをあなどるなよっ!!!!

 

 なんだこんなもの!!!!

 こんな醤油みたいなもの!!!!

 

 Shoyu2  

 

 
 
 なんだよっ!!!
 そんなことするわけがないだろうっ!!!! まんまと騙されてウニに醤油をつけて食べようなどと!!!! このかれこれ4ヶ月も中南米を旅しているつわもののオレが!! そんな愚かなことを!!!!!

 ましてや醤油用に小皿まで持って来てもらって!!!!!
 
 
 
 
 

 
 
 
Shoyuuni
 

 
 
 
 















 
 ちょぴっ。ちゅるるっっ。(醤油にウニをつけてスルッとお口に入れる私)
 
 
 
 
 
 








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 うまい(号泣)。
 
 
 
 
 
 
 
 こうなったらもうさ、そりゃあご飯を頼むでしょ。ご飯。上の写真を見てくれ。左側に、既にご飯がスタンバイしているだろう。白くてつぶつぶで数多いかわいい奴。用意周到だろう。どうだオイ。
 
 よーし。ここはひとつ、ウニをご飯に乗せてみようじゃないか。申し訳程度にウニ丼もどきを作ってみようじゃないか。所詮ウニ丼などと言っても結局高価なウニをふんだんに使うわけにはいかないので世間一般のウニ丼はご飯の量に対してウニが少ししかない、バランスが取れていないウニの寂しいウニ丼であり今回もどうせ同じようになるのだろうけど。ウニ丼のウニなんて少ししかないものだから。寂しいほどの量しか無いものだよウニ丼に乗るウニなんて。でも寂しくてもいいからそんなウニ丼を作ってみようじゃないか。寂しさには慣れているオレさ。
 ではウニを、ちょっとずつ乗せて……
 
 どんぶりのウニをご飯に、あるだけ全部乗せて……。
 

 

 



 

 
 
 …………。

  
 
 
 
Unidon1 
 
 

 

 

 

 







 
 …………。
 
 
 
 

Unidon_2
 
 

 
 
 
 
 バカやろう!!!!!!!!!!
 
 なんだこれはっっ!!!!! けしからん。けしからんぞっっ!!!!! なんだこのウニの横暴ぶりはっ!!! やり過ぎだっ!!! 横暴だ!!! ご飯が見えないじゃないかよっ!!!!
 
 そりゃあ、ウニだって生き物だ。自分の存在を主張したいというその気持ちはわかる。でもなあ、だからって、ご飯を隠してしまうようなことが許されるのか!!!! ご飯が見えないくらいまでに!!!! いくらウニでも、他の食べ物を妨げる権利なんか無い!!! 自己主張をするために他のものを妨げるなんてことは許されないんだっ!!!! このウニめっ!!!!
 
 
 そして私はウニ丼に醤油をかけて大量のウニとご飯をむさぼり食い、みなしごだった僕は初めて幸せというものの存在を知るのでした。
 さよならチリ。さよなら南米。

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