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ねずみは米が好き

 特に孤独や苦しみが強い時に町で流れていた旅先での音楽というのは、帰国してから何かの拍子で耳にするとそのまんま当時の思いが蘇って来て非常にジーンとくる。その当時の体験が辛ければ辛いほど、日記や写真や音楽によって呼び出される気持ちが大きくなる。これはなんとも言葉では表現し難い感情で、なんの高ぶりかははっきり説明できないまま、しかしきっかけを与えられることで突然ドーーーーン!!!!と凄い動揺がやって来るのだ。

 懐かしさと自分への同情と「よくやった」という気持ちと心細さと、いろいろなものがミックスされた激しい思いで、このドーーン!という感情を体験出来る自分になったということ、この気持ちは、一人旅というものに出かけて得た貴重な財産かもしれない。
 その突然の揺さぶりを呼び起こす元となるのは写真や人の旅行記やテレビやいろいろな要素があるが、それよりも何よりもやはり音楽の力はズバ抜けて大きい。

 そんな数ある個人的な「聞くと大変なことになる音楽コレクション」の中に中国の「老鼠愛大米」という歌がある。日本語に訳すと「ねずみは米が好き」。サイトの中国旅行記の中でもヘンなところで一度登場したのだが、これは後から知ったところによると、中国から発祥していろんな国に渡り、いろんな言語のバージョンが作られているらしい。

 これはいわゆる恋に関する歌、ラブソングというものだ。よってこれからYoutubeの動画が貼られているが、音楽や恋愛や殊勝な展開に特に興味が無いという人は先に進まない方がいいと思う。あまり面白みを感じられるものではないので。

 元々この歌を作った元祖のお方は男性の歌手らしいが、今では中国国内でも様々な歌手が歌っており、下にある映像はTwinsという2人組のアイドル歌手のPVである。できたら、時間のある時にゆっくり聞いてもらいたい。ちゃんと聞いてみると、この「老鼠愛大米」、特に旅の思い出が無くても、言葉がわからなくてもなんとなくいい歌だと思えないだろうか?

老鼠愛大米(中国語)

 

 漢字字幕がついているので、部分的な意味はわからずとも全体的にはなにやら切々と自分の恋する気持ちを語っている歌だというようなことはわかるのではないかと思う。わからない場合は直接訳をどうぞ

 そしてこの曲は英語にもなっていて、Englishバージョンでは「Mouse Loves Rice」というそのままのタイトルである。英語ではあるのだが、これは歌詞がとっても簡単な単語と文章で成り立っており、またこれも動画を貼っているがおそらくほとんどの人は字幕を見てどういう意味なのかは理解できるのではと思う。この英語の歌詞は、元の中国語の内容にだいぶ近いようである。これもぜひ心に余裕がある時にゆっくり聞いて欲しい。ただ、ちょっと埋め込みだと小さくなってしまって字幕が読み取れないかもしれない(特に最初の1行はぶっつぶれている)ので、直接このYoutubeの別ウィンドウで見た方がいいかもしれない。歌詞も右上の枠の中に書かれているので、じっくり見られるよ。

Mouse Loves Rice(英語)

 

 聞きましたか? どうでしたか?? いい歌でしたか??

 なお、歌詞の部分に意識を向けていると、よっぽど英語が堪能な人でなければ映像の部分には目をやる暇が無い。なので、一度英語の歌詞を理解したらぜひ2度目は中国版の内山君みたいな男性が出てくるPVの映像自体に注目して欲しい。旅の思い出などなくても、人生で辛い経験を乗り越えて来た人ならば、心を打たれてしまう映像だと思う。まさかこれが中国で作られたPVだなんて!!とショックを受け、ある程度中国に対する印象も変わるほどのものではないだろうか。

 ところが、今回言いたいことは何かというと、いつも特に言いたいことがあって書いているわけではないのであるが、この歌には日本語バージョンもあるのだ。NHKの「みんなの歌」で流れていたお子様バージョンなので、ふと再生してみると最初にチューチュー言っていてガクッとなるが、しかし、この日本語バージョンをまた歌詞に注目して聴いてみてほしい。先ほどの英語のストレートに自分の思いを相手にぶつける歌詞と比べて、だいぶ違いがある。
マメ知識:「我愛イ尓(ウォーアイニー)」というのは、「I love you」という意味だよ。

ねずみは米が好き(日本語)

 

 というのが、日本語。

 とにかく私があなたのことをどんなに好きですということを強く伝えるのが英語の歌詞。好きだけど言えないけど好きですというのが、日本語の歌詞。どうだろう。自分の気持ちをストレートに伝えてこそ、伝えなければ意味が無いというポリシーの人、つまり英語歌詞の生き方の人も世の中にはたくさんいると思う。

 しかし、オレはこの日本語の歌詞こそが、日本人の持つ奥ゆかしさや良い意味でシャイで控え目でガツガツ出来ない、穏やかな日本の心というものをすごく良く表している気がして、とーっても大好きなのである。まさにこの歌詞の内容こそが、日本人の心の美しさだと思う。そして原曲と少し方向性が変わってしまうのにもかかわらずあえて日本語にする際にこの歌詞をつけた人は、なんて才能のある人なんだろうと思う。ただ中国語を喋れる人、ただ英語を喋れる人ではとてもこんな素晴らしい翻訳は出来ないのではないだろうか?

 とはいえもしかすると翻訳した人とそれをまた曲にあわせて歌詞に直した人は別かもしれないが、とにかくこれらの歌を聞いていると、中国も日本も両方とも美しいところがたくさんあるんだなあ、世界が平和になればいいなあ、と……、時々は殊勝な気分になって、漠然と思うのだった。

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