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電撃メロン

 先日フライドチキンに当たり見事に食中毒街道まっしぐら、エアコンをつけてパジャマの上着の裾をズボンに入れ布団を3枚かぶっても寒気で震え上がり歯をガチガチ打ち鳴らしていたオレであるが、しかしそれは別にオレの胃袋がセレブクロになって軟弱化していたからというわけではなく、むしろチキンこそが凶悪すぎる毒を持っていたからだということがわかった。

 なにしろ、毒経験豊富につき食中毒自体への免疫も持っているはずだし、ハエや羽虫や土や髪の毛でダシがよ~く取れている激安デンジャラスローカル料理を何十、何百食と中国インドアフリカで食べきってきた男だ。そして消化して血や肉に変えてきた男だ(ハエや羽虫やケニア人の体毛を)。そんな男だ。このオレという、時代を飲み込む碧眼児は。

 その強靭な食道を東京での寝たきり暮らしで失ってしまったのかと思い、先日売れ残りの激安メロンを購入し自分の力を試してみた。そもそもスーパーの店頭で売れ残った切り売りのメロンであり、もはや消費期限は風前の灯火だったのだがそれを持って帰り、1日寝かせて食べてみた。

 それはまさに電撃メロンと呼ぶにふさわしく、一切れすくって舌に乗せた瞬間「ビリビリっ!!」と痺れが来るのである。メロンを食べて痺れが来たらすぐに吐き出さなければならない。お母さんやおばあちゃんだったら丸ごと捨ててしまうだろう。もはや熟女を遥かに通り越した超熟ぶりで、腐る寸前がいちばん美味しいという状態からさらに何歩か先へ進んで、寸前というよりむしろ直後だ。

 だがそこはメロンを自分の小遣いで買った貧乏人メロン好きとして引き下がるわけにはいかない。腐る寸前が一番美味しいのならば、腐ったメロンは一番美味しい次の段階であり、2番目くらいに美味しいはず。このメロンが今第二の輝きを放っているのに、味あわずに捨てるなんてそんなごむたいなことはできない。メロンを捨てるということは、激しく生きる作者としてのアイデンティティの崩壊につながるのだ。

 ビリンビリンに舌を震えさせながら、それでも「しびれる~~!! あま~い! しびれる~~!! うま~い!」と結局1個の半分を丸々食べつくした。こんなにダメなへたれなメロンを食べたならば、胃袋がセレブクロになっている上流階級の方々は翌日にはビリビリと熱を出してビリビリと腹を下し、ビリビリと寝込むことだろう。

 もしオレが旅先で培った頑強な乱れ胃腸を失っているとしたら、次の日は食中毒リターンズになるに違いない。おなじみの激しい下痢も復活し、帰って来た下痢トラマンとなって悪夢の中で宇宙怪獣と戦うだろう。というところだったが、これがまた見事に腹にはな~~~~~んの影響も無かったのである。腐ったメロンの法則で、みかんがひとつ腐っていると周りのミカンまでダメになってしまうが、ひとつのメロンが腐っていてもメロンというのはそもそも値段が高く冷蔵庫には他のメロンが無い。よって腐ったメロンは周りに影響を与えない。とはいえ人体には悪い効果を発動し、食べた人間の胃腸や人格を腐らせるというのがマリンちゃんの提唱するメロンの法則である。だから本来オレは法則にのっとって腐っていてもいいはずであるが、人格は腐ったとはいえ胃腸はいたって健康である。ちなみにメロンといっても今井メロとは関係ない。注意するように。

 ということは、腐ったメロン程度は全然平気な発展途上国仕様のオレの胃と腸が、一見腐っていなさそうなフライドチキンであれだけ痛恨のダメージをくらったのならば、それこそあのフライドチキンにはDDTやら枯れ葉剤やら青酸カリでも入っていたのではないかという気がしてくる。もしかして、リトビネンコ氏もこの方法で暗殺されたのではないか。どうもチキンを買ったあの日、厨房で働いていたロシア人の諜報部員が殺気立った目でオレを見ているような気がしたのだ。リトビネンコ殺害のニュースを見るたびに、「次はオレの番ではないだろうか……」という恐怖感に身をとらえられたものである。

 まあ腐ったメロンを格安で食べるのもいいが、死ぬ前には1度くらい1個まるごとメロンを、自分の力で買ってみたい。せめて1度でいいから。そのようにして自分の力を誇示したい。

 さて、昨日の化学に引き続き。本日の授業は数学でした。

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