金曜日からの話
寝ながら書いている。こんなことになってしまったのはあくまでも自分のテキトーさが原因であり、某フライドチキン販売会社さんにはなんら責任の無いことである。いや、責任の一端、何パーセントかはあるかもしれないが、ともかくもオレが自ら招かなくてもよかったのに招いた災いである。
金曜はまさに地獄であった。日本での生活史上最悪の苦しみを味わったといえるであろう。朝の通勤時、電車に乗っている時に腹が何かおかしくなっているのを感じた。しかし、下痢ラであり腹痛マスターとしては腹がおかしいのは朝飯前でお茶の子さいさいであるので、まあ金曜日でもあるし疲れているだけなのだろう、でも今日さえ終われば家に帰って11時から未来創造堂で西尾由佳里アナに萌えて深夜までYoutubeのおもしろ動画探しでもして、明日も明後日も昼まで寝ていられる……そしてファーストキッチンのチーズポテトとガーリックバターポテトをつまみながら蒼天航路を読んで、ウハウハ。
とウハウハしていた。しかし、金曜午前中、仕事をしながらも腹はどんどんおかしくなっていた。何度かトイレに行った。最初は腹の具合だけだったが、次第に全身に悪寒が。腸を中心に内臓、ひいては体全体に毒が拡散している。腹痛マスターは、すぐにピンと来た。
これは、食中毒である。なんつっても、こちとら食中毒経験は豊富だ(号泣)。古くは大学時代に名古屋のクレタで食べ放題のカレーを食って倒れ、旅の間はスーダンでステーキを食って、インドでキムチを食って生ける屍となった。食中毒の時の体調の大きな特徴といえば、原因である該当食品を頭の中に思い浮かべると、その瞬間吐き気に襲われるということである。
果たしてその食品は今回は何かというと、その前夜遅くに食べたフライドチキンである。これはカーネルさんでおなじみの最大手フライドチキン会社で買ってきたものであるが、しかし賞味期限が過ぎていた。今話題の賞味期限切れの商品ではなくて、オレが賞味期限の切れているものを勝手に食ったのだ。購入したのはその2日前であり、冷蔵庫に入れていたとはいえ期限切れからまる2日経ったフライドチキンを食ったのだ。
もちろん2日前に期限の過ぎたフライドチキンなど、インドやスーダンでなら刺身クラスの新鮮な食物という位置づけであろう。それより新鮮なものを食べようとしたら、養鶏場の鶏を直接食うしかない。まさかオレがそんなものに当たるなどとは予想だにしなかった。とはいえ当たったのは事実だ。医者に行ったわけではないが、症状は完全に食中毒である。汚すぎてここには書けないが食中毒には特有の○○の○○とかがあるのだ。汚い中で「あー、懐かしい……インドを思い出すぜ……」とか感慨深くなってしまったくらいである。
さて、12時の時点でもうこりゃとても1日持たんな、と結論づけた結果あっさり早退を申し出て帰宅したのだが、そこからもう1分おきにグングン体調が悪化。電車に乗っている間、椅子に座りながらも膝をかかえて丸まりうめき、乗り換え後も電車の発車まで6分間がひたすら長く、「とりあえず10秒数えてみよう。10秒を数えるのを何回も繰り返せばそのうち発車時間になるはずだ……」と自分を励まし10秒を何度も数えた。何度も何度も数えているうちになんとか発車した。だるいもしくは痛いというのが第一で、そしてじわじわと下痢の次の波が……。
食中毒時の下痢は気合でどうにか我慢できるものではない。これを我慢しようなどと思ったら漏らすこと確実である。最寄り駅に着き、徒歩7分で帰宅というところまで来たがここで爆発10秒前になり、本屋でトイレに駆け込んだ。トイレで爆発。
なんとか気合で立ち上がりパンツを履いて、家まで歩く。意識がうまく働いておらず、視界の周りの部分が白い。中心部だけがぼんやり見えている状態である。こんな見え方をこの地域がするようになろうとは……。とりあえずあの信号まで、あのコンビニまで、あの白黒のネコのいる家までがんばろうと細かく目標を定めながらなんとか帰宅。
布団に入りぶっ倒れる。猛烈に寒くなる。サ、サムイ……毛布と布団2枚にくるまってエアコンもつけているのにガクガク震えてしまうのだ。さらに激しい頭痛。そして、だるい時というのは普段あまり調子のよくない関節にダメージが来るので、オレの場合は肩と腰に激痛が来た。ノンストップ激痛で、下痢より寒さより今回はこれが一番きつかった。下痢はもちろん止まらない。
体温は最高で38.6度まで上がったが、オレはここ7、8年日本では風邪で熱を出したことも無いのである。日本でここ7、8年熱を出したことが無いオレが38.6度というのは、普通のよく熱を出す人にしてみれば体温が50度くらいまで上がるのと同等だといえよう。もう二度と日本で熱で倒れることは無いと信じていたのだが……。これは、やはり年齢によるものなのだろうか。むむう……これが30歳というものなのか……。
そこから翌朝まで20時間くらい。体の痛みの中で幻覚なのか夢なのか、完全に頭がおかしくなってしまった。体としては寝ようという用意はあるようなのだが、頭が暴走しており、しばらくオレは「リアル鬼ごっこ」の登場人物になっていた。
これにもほんとひたすら苦しめられた。まさしくこれが今回の山場であった。20時間ずっとだ。丁度金曜の朝に文庫版の「リアル鬼ごっこ」というホラー(?)小説を読みきったということが完全に原因なのだが、意識が朦朧としている中で目をつぶっても目を開けていても夢を見るような状態で、殺したり殺されたり逃げ回ったりしていた。これは本当に恐ろしかった。普通夢だったら、殺されるところで目が覚めて「ああ、よかった、夢だった……」となるところなのだが、金曜午後から土曜朝までの20時間は、起きても殺人鬼に追われているのだ。目が覚めて天井とか時計とかが見えているのに、なぜかまだ悪夢の中にいるのである。肩が~腰が痛い~~助けてくれ~~殺人鬼が~~~とか思いながら目を開けてしばらく呻き、再び目を閉じて、また普通の夢として話の続きを見るのだ。
リアル鬼ごっこは、文芸社から協力出版という、自費出版の名前を変えただけの方式で出された単行本で、しかしながらその協力出版として唯一(多分)まともに売れた、いや30万部という超ベストセラーになった小説である。しかし、自費出版というのは何が問題かというと、どんなに国語力が無くても金さえ払えば出版できるというところである。
このamazonのレビューを読んでもらいたい。すごいから。
オレの読んだのは文庫になった方で、幻冬舎によって徹底的に文章が直されたものらしい。しかし、それにもかかわらずどう見ても小学生の作文以下の文章なのである。直されているのに小学生以下なのだ。出版されている本で今後これを下回る文章力のものに出会うことは絶対に無いと思う。それくらいすさまじい内容である。
とはいえ別にキレイな文章が書ければ本が売れるわけではない。文章の書き方なんて訓練すればいくらでも上達するもので、大事なのは発想力とか観察力とか感性であろう。国語の成績が5の普通の人と、国語の成績が1の変人とでは、本を書いて売れるのはきっと変人の方だ。
幻冬舎の見城社長も、「いい本が必ず売れるとは限らないが、売れた本は必ずいい本である」と著書の中で言っていたので、少なくともオレの本よりリアル鬼ごっこは100倍くらい良い本なのである。
そんなことはどうでもよくて、なにしろこの本の内容は「全国の佐藤姓の人を鬼が皆殺しにする」というホラーなもので、よってバーチャルな意識の中で全身痛と戦いながらこの物語に巻き込まれた20時間はまさに地獄、死後の世界であった。
もしオレが今週の通勤時間ずっとフランス書院の官能小説を読んでいたら……。どれだけこの20時間がめくるめく快楽の悦びの時間であったか。少しは腰痛も和らいだだろうに。
さて、土曜は37.5度まで熱が下がり、なんとか「これは現実である!!」と理解できるまで意識もはっきりしてきた。ガッツ石松がOK牧場を訪れる番組を見て、久しぶりに見る吉井怜のかわいさに身震いしたりしていたものだ。すると、木曜夜のフライドチキン以来何も食べていなかったため突然腹が減ってきた。そこで、オレは調子に乗って外食に出かけた。
で、トンカツを食ったのだが、キャベツを食い終わったくらいの段階から冷や汗が放出。再び意識朦朧となる。もう目の前にあるのがトンカツなのかチキンカツなのかもわからなくなるくらい、なんで家でおとなしくしていなかったのか自分を責めた。そして途中リタイアして家に帰った。
またしばらくぶっ倒れ、むっくり起き上がってシャワーを浴びてエンタの神様を見てまた倒れたりしながらもなんとかまともに寝られるようになる。
だがここで第二の悲劇が……。
夜中にあまりにも肩と腰が痛く、電動でウィーン~~と動く例のマッサージ器で肩の筋肉をほぐしまくった。イタギモチイイ、というか痛い方が強くイタイタキモチイイくらいだったが、しかしほとんど何十時間も身動きしていないしきっと肉も硬直しているんだろうと思って調子に乗って肩をマッサージしていたのだが、その後一度寝て起きると、右肩に尋常じゃない激痛が。
日曜の朝、ここに来て意識は完全に回復し体温も37度を切り、もう復活したと言っても過言ではないがしかし右肩がこれまた過去に体験したことが無いくらい痛いのである。右肩を上げることが出来ず、なんと「わっはっは」と声を出して笑っただけでズキズキズキ~ン!!! と響くのだ。マッサージ器かけすぎた。
しかしこうして長い文章を書いていることからもわかるように、午後になりフロに入って温めて、まだ肩は上がらないが結構なスピードで回復に向かっている。あとは少しだけ時が経てばもう完治するだろう。そして仕事に復帰だ。
だが、金曜の昼から果てしなく苦しんで土日を悶えて、月曜から完全体に戻り会社とはなんという神の試練なのだろう。これだったら健康体のまま12日連続出勤のほうがまだマシである。旅行記も1本分まるまる書けなかった……。別に趣味なんだから書く義務も何も無いんだけど。
それにしてもだ。いくら賞味期限切れのものを食ったからって、ここまでの食中毒になるか?? 冷蔵庫に入れておいて2日前のフライドチキンを食うって、別にオレだけじゃなくてそのあたりの家庭でも時々は行われていそうなイベントの気がするのだが。殺人鬼に追われる幻覚まで見せられたんだぞ(20時間延々と)?? やはり、どうも最初から少しおかしなところが、あのチキンにあったような気がしてならない。だいたい今まで食中毒になった時は、「後にして思えばあの時食べながらなんかおかしいと思ったんだよな……」という感想を持つことが多く、それに気付いたおかげで旅の途中は例えば中国の餃子など「ん。これはやばい!!!!」と思い途中で食べるのをやめて命拾いした(多分)ということが何度かあった。
今回のチキンも、今思い返してみれば購入当日に食べた分にしても「あれ? フライドチキンってこんなに味気なかったっけ??」と、そういえばあの時思ったのだ。自分でわざわざ買って来るくらいだから相当好きなものであるのだが、「美味しくないかも」と思ったのはたしかに今までのフライドチキンの歴史の中であの時が初めてかもしれない。といっても、賞味期限内に食べたその分に関しては体調不良は引き起こさず、あくまでも期限が切れたものを食べてのこの展開でありあちら(健太さん)にしてみれば全く文句を言われる筋合いなど無いとは思うのだが……。やはりオレの体が前以上に貧弱になってしまっているということなのだろうか。腹痛マスターなのに。
とりあえず少しでも残された休日を楽しむために、買い置きしてあった金田一少年の事件簿でも読もうと思う。その後また体調を崩したら同じように殺人の悪夢に襲われることになるだろうけど……。
来週は、絶対自分の土日を楽しんで活用したい。
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