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オレだってクレープを食べたい

 働くニートです。久しぶりに、また働き始めています。中程度の引きこもりとしては仕事をするなんてことは激しい屈辱でありますが、アジア横断のために仕事をやめてから実に1年半以上1分たりとも働いておらず、さすがに極貧生活を貫いても一人暮らしとしてはどうにもこうにもまこっちゃんになってしまいました。

 おっと、1分たりともということはなかった。そういえばインドで土産物屋めぐりを演技派女優に変身して行い50ルピーくらい稼いだんだった。(名著・「インドなんて二度と行くか」参照)

 しかし月曜から金曜まで毎日働くというのは考えられない苦行だ。しかも会社でもすごい勢いで仕事をしているのだ(オレじゃなくて他の人ね)。だらだら~~と自分に負担がかからないようなスローペースではなく、ずーーーーーーーーーーーーーっとがんばって働いているのだ。こんなに働く人間は日本以外では見たこと無いぞ。オレなんて朝は毎日「もう行くのやめちゃえば?」とささやく天使と悪魔(両方)との戦い、そして業務中は消え行く意識との戦いであった。ニート期間中は睡眠なんて1日10時間ほどとっていたので、オレはたくさん寝ないと脳も体も動かなくなる人間なのだ。そういう人間なのだ。そういう大人なのだ。

 朝起きると隣でエルモズがグースカ寝ているのだが、こいつらはオレが起きてもお構いなく寝っぱなしで、さらにオレが仕事から帰ってきてもまだ寝ているのである!!!! 毎朝起きるたびにエルモズを見て心から「こいつらはいいよなあ好きなだけ寝てられて」と憎たらしく思うのである。

 しかしとにかく1人暮らしで中程度の引きこもりとしては、引きこもりに戻るためには働くしかないのだ。働いて引きこもり資金を稼いでこそ満足に引きこもりが出来る。長く引きこもるためには長く働かなければならない。これは中程度の引きこもりの宿命だ。

 ということで、金曜の夕方、自宅最寄駅に帰り着いたオレはお近くのクレープ屋さんに立ち寄った。おやつとしてクレープを買うなんてことはニート時代には130%あり得ないことで、おやつではなく昼食代わりにすることすら許されなかったのだ。なぜならニート時代は1日1食(食費は200円ほど)の生活だからである。だからって別にパソコンとテレビの前を往復するだけだから(往復とはいわん)消費エネルギーは1日30キロカロリーほどで、新陳代謝上特に問題はない。

 だが、毎日このクレープ屋さんの前を通るたびにそのショーケースの中の光り輝くクレープたちのサンプルに心を奪われ、「よし。今のオレはちゃんと働いているんだ。金曜日になったら、絶対これを買ってやるんだ!」と決意していた。だから金曜日になったので買った。

 クレープ屋さんだけに店舗というよりは販売窓口があるだけで、その前は普通の歩道になっており適当に椅子が並んでいる。注文したら、その適当に並んだ椅子に座って出来上がりを待つシステムなのである。はっきりいって、そこで待つこと自体、クレープを待っているということが通行人にわかってしまい恥ずかしい。

 しかしクレープはクレープというだけあって客層は実に女性がらみが多い。というかオレ以外で椅子に座ってクレープを待っているのは全団体女性がらみだ。カップルとか若い女の友達同士とか。男1人なんてオレだけ。オンリーオレ。オンリーロンリーオレ。

 注文して待っている間にこれは出来上がったものはどうやって持って来てくれるのだろうと考えていたのだが、どうも店舗から店員が出てくる気がしない。マックとかファーストキッチンとかだったら、ウェスタン風の押すだけで開くちっこい扉をお姉さんがかぱーんと開いてポテトを持って来るのだが、このクレープ屋はそのウェスタン風の扉が無い。これはもしかして、出来上がったら呼ばれるのではないだろうか?? そうすると「何番でお待ちのかた~」とか言われるのだろうか????

 その時、若いお姉さんの大きな声が響いた。





「お待たせしました! チョコバナナでお待ちのお客様~~!!」





 ……。





 チョコバナナでお待ちのお客様……。





 それオレのことだ。

 ちょっと待ってくれ。チョコバナナでお待ちのって、見たとおりオレは男1人で、隣の椅子にはカップルとか女の友達同士とか、そんなのが大勢座ってるんだぞ?? その中で「チョコバナナでお待ちの方!」って叫ばれてオレが出て行くのか?? オレが男1人でチョコバナナクレープを買いに来たということを他の全員の客に知られてしまうんだぞ?? おい! そんなのイヤだろうが!!!

 でも知らん振りしてるわけにはいかなかった。他の客はみんな2人連れ以上だし、チョコバナナ単体で待っているのなんかどうせオレに決まっているのだ。オレは周囲の年下の人間たちの蔑みの視線の中で恥辱にまみれながら、素直に「はーい」と返事をして、チョコバナナクレープを受け取りに行った。

 他の客、見ればいいさ。オレのことを見ればいいさ。そして後から笑いながら噂すればいいさ。そうだよ。オレは男1人でチョコバナナクレープを買ってるんだよ。ただのチョコでもない、わざわざただのチョコより少し料金が高めのチョコバナナクレープにしたんだよ。だってバナナがおいしそうだったから。バナナとチョコソースが絡まったら舌の上でどんなハーモニーを奏でるか期待で胸がはちきれんばかりに膨らんだから。

 今週は、一生懸命5日間も働いたんだ。金曜になったらクレープを買うと決めていたんだ。そのオレに対してどうしてこのような酷い仕打ちをするんだ!! 男が1人でチョコバナナクレープを買っちゃいけないのかよ!!! 男1人だったらチョコだけにしなくちゃいけないのかよ!!! もしくは男らしくチョコアーモンドとかを選ばなきゃいけないのかよ!!!! バナナを選んだっていいじゃないか!!! オレはチョコバナナが食べたかったんだよ!!! そのためにがんばってきたんだよ!!!!

 オレはチョコバナナを受け取り、すぐにその場を離れた。屈辱を浴び続けながら、ここで食べるなんてできない。ここで味わうなんてできない。なので家に帰りながら、歩きながら食べた。チョコバナナクレープを食べながら帰った。しかし、疲れている時にチョコバナナクレープを食べたら、甘くてパサパサして喉が渇くだけだった。

 男1人でもクレープを食べたっていいじゃないか。お好みでトッピングをいろいろミックスしたっていいじゃないか。次はストロベリーチョコ生クリームを買おうと思ったのに。もう絶対買えなくなっちゃったじゃないか……。

 いつか彼女ができる日があれば、たとえ何年後だとしても彼女と一緒にストロベリーチョコ生クリームを買いに行こうと思う。そしてもしその時に1人でチョコバナナを買いに来ている男を見かけたら、笑ってやりたいと思う。





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コメント

チョコバナナを選ぶのはクレープ通だと思います。
だから私なら
「やるね、お兄さん!」
という眼差しで見ると思います。

甘いものを男性が平気な顔して食べないのは日本だけじゃないでしょうか。

そうですよねー。僕もファミレスに1人でパフェを食べに行きたいです。でも店員のおねーさんがたの視線が怖くて。
おもいっきり食べてみたいです。パフェ。コンビニで買う安っぽいパフェじゃなくて、ちゃんとファミレスで作りたてのひやひやのパフェが食べたいです。

ひとりクレープ良いじゃないですか!
わたしはおなごにも関わらず、ひとりファミレス、ひとり路上ドネル買い、なんでもやっちゃいます。
甘いもの好きな男性は甘いもの嫌いな弾性よりイイですよ、絶対。

ってかそれよりもエルモズの方が気になるのはわたしだけ。。。?

ひとりファミレスは、女性ならまだ許されるような気がします。女性が1人でパフェ食っててもほほえましいですもん。男は不気味です。ドネルってなんでしょう。ドネル害って。嫌いな弾性も気になります。

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